それはある日の中古屋で。
 

このお話は、昔私が使っていた古いパソコン(PC-9801VX)で『やってしまった』ゲームのお話です。

そのPCは当時(もう10年近く前)でさえ古いPCでした。
世の中にはすでにCD-ROMを読み込むPCが出回っていた頃と言うのに
音楽なんて鳴らせないし(音源ボードなんて物が別途必要)
画面は16色表示。(スーファミより低いぜ!)
HDDなんてついてないし(つけるにはお金かかるのよ・・・)
キーボードたたくよりうるさいフロッピードライブ(しかも5インチフロッピー)

んがー、んっ…んっ…んっ…んがー、がっがっがっが、んーんー

なんて音がフロッピーにアクセスするたびに響くイカしたPC。

なんで、このPCでゲームやるなんて考えてませんでした。
ワープロとBASICでプログラムを作る程度。普段はあまり触ってませんでした。


ある日、安そうなスーファミソフトを探しに行った中古屋でのこと。
レジ前のワゴンセールに500円で売られているPCソフトがありました。
ワゴンセールのゲームって、あまりいい印象は無かったのですが(燃えプロが山となってたり)
タイトルだけが書かれてた渋いパッケージが気になり、思わず手を出してしまったのです。

んで…その内容は「外科手術シミュレーション」。…わお。

なんて暗そうな(そして危険な)ジャンル。ああ、こんな怪しげなジャンルのゲームがあるなんて…。
剣と魔法の勇者の旅とか、俺より強い奴に会いにいくゲームなんて霞んで見えました。
さらに、動作環境見てみると自分のPCで動く。(つうか自分のPCくらい古くないと動かない。)
しかも500円

こんな「自分のために売られている」ようなゲーム、放っとくはずはありません。

私は早速購入すると急いで家に帰ったのでした。


 

起動しちゃうぞこの野郎。

さてさて、自分の家に帰ってきたら、とりあえずマニュアルも見ないで
早速自分のPCにフロッピーをつっこんで起動させてみました。

んがー、んっ…んっ…んっ…んがー、がっがっがっが、んーんー

いつも通りの読み込み音の後に、BEEP音が聞こえるスピーカーから、おどろおどろしい音楽が流れてきました。


 

そして出てきた画面が↓これ。



うひゃー。怖いよ。自分の首メスで刺してるよ(って見えるよね?)

バックには心臓に悪そうなドドデデデドドデドデドデなんて音楽が流れてるし…。
いやな汗をかいて焦る医者。

ああ、いい買い物した!

って本気で思いましたね。オープニングからこんな熱いなんて嬉しくて嬉しくて。


 

心臓に悪いオープニングが終わって、場面は病院の入り口に変わります。



 

濃い顔の看護婦さんが迎えてくれました。

「ハロー、ドクター。ようこそツールワーク総合病院へ。」

おお、そうよ。そうだよ。俺ドクターなのよ。

病魔に苦しむ人々を救う優秀な医師。すげえ。カッコイイ!
今から何するかよく分かってないけどまぁ。OK。きっと多分うまくいく。

看護婦さんの差し出す書類にさらさらとペンを走らせると、メディカルスクールへの出席を求められました。

早速メディカルスクールへと足を運ぶドクターはぎ。

ついた先にはもう研修医の皆さんと講師の方が来ていました。

 

 

ふんふん。まーここでチュートリアルな物みれるのね。OKOK。

天才医師ドクターはぎには必要ない物だな。(どこからこの自信がわいてきてるのかは不明。)

大体ほら、初めてのゲームでも何となく分かるじゃん?楽勝っすよ。ええ。
分かんないその時になってヘルプなり説明書見れば問題なし。

って事で、後半の授業は聞き流して早速患者さんの所へ。

 

↓患者さん



ほうほう、どこか痛むのかな?このドクターはぎに任せなさい。
…っと。とりあえず一番目立つクリップボードをクリッククリック。


 

患者は36歳の男性です。
患者は急性腹痛を訴えており、吐き気・けいれん・全身の衰弱・めまいを併発しています。

 

ふむ。なるほどなるほど…(って情報これだけかよ…)
あーでは…触診でもしてみましょう。(患者さんのお腹をクリックするといきなり腹部アップになります)
 

 

えい。つんつん。


 

 

痛みは無いですか…。そうですか…。(どうすればいいのよ。)
この段階でドクターに選べる選択肢は…。

観察
投薬
手術
X線
超音波スキャン
専門医に委託

…の6個。大きい文字がドクターを誘ってますが、なんか「すごい事」になりそうなので今回は控えておきます。
って事で…んー。んじゃ何となくだけどX線で記念写真でも撮ってみますか。



 

ふーん。骨…だね。骨…かぁ…お腹痛いんだよねぇ。そーかーぁ。
そーだねー。見たところ異常なさそうだしなぁ。んー…

 

(思考時間15秒)

 

 

んー。おし!結論!患者さん!





「は、はい。」

あなたの腹痛の原因は気のせいです。

「えっ!?でも先生。滅茶滅茶痛いです。」

それは己に打ち勝つ信念が足りないのです!

「あ、えと、その…信念…ですか?」

そうです。あなたはまずあなたのの弱さを叩きつぶさなくてはなりません。
先ずは自分に打ち勝て!打ち勝て!

「打ち勝てと言われても…どうすれば…。」

決めるのは誰だ?やるのは誰だ?行くのは誰だ?そぉーう!お前だぁ!お前が舵を取れ!

「か、舵ですか…」

わかるか!わかるか!お前が決めろ!お前がしっかり舵を取れ!

「わ、わかりました…」

いよぉおおおおおおし!!って事で結論は…



「観察」
ヨーソロー!

 

んでクリップボードには「観察」にチェックっと…。

ふう。一仕事終わりました。素晴らしい診断と患者を勇気付ける熱い言葉。

決して判断がつかないから一番無難な物を選んだ訳じゃありませんよ。ええ。
あの患者さんには克己の念が必要だったのです。間違いないです。

…いやぁしかし、まるで病院ドラマのワンシーンのようでしたね。それじゃ、気分よく次の病室へ行きましょう。



…っと、ドアを出たとたん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やってもうた…

 

 

 

 

BEEPスピーカーからは携帯の着メロよりしょぼい短音で葬送行進曲。
うちひしがれるドクターはぎに、クールな外科部長が話しかけてきます。





「患者は虫垂が破裂して死亡してしまいました。
気をつけてください!
直ちにメディカルスクールに出席してください。」

いや…死亡させたのにその温情お裁き…。
気をつけるだけで良いのですか…私…。

それとも患者の命なんて「虫けら同然の安い物」なのですか…。うぅ。
せっかくあんなに励ましたのに…

とりあえず…出席してきます。はい…。

シム日記じゃないですけど、やっぱりここでもドナドナを歌いたくなりますね。
ドクターはぎの心の仔牛は悲しそうな瞳で見つめ返してきます…。

 

ハァ…こうして診断第一発目は幕を閉じました。

続きへどうぞ。

-NEXT-

 

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